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猫の契約








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顔もよく知らないほど疎遠な親戚の家に 

“ 長く生きている猫がいる ” と聞き 会いに出かけた。




日がな一日 台所のテーブル下から滅多に動くことがないという老猫は

「 人間ならば百をいくつか超えている 」 と聞いて想像していたよりもずっと

からだつきはふっくら丸く 毛並みも綺麗であることに驚いた。




とはいえ もはやその目は光を失って久しく 耳もずいぶん遠いのだと

これまた年老いた親戚は苦笑いをしてみせた。




どっこいしょと いささか乱暴に猫を膝に抱き上げると

彼女はこんな話を始めた。












この子がうちに来て18年経ったとき

こんなふうに言ったものだよ




“ どうか あと2年は生きていておくれ ”





お前がうちに来るまでも たくさんの野良猫を世話してきた



どれもみな 道で車に轢かれて長生きしなかった



お前は利口だから 決して道路を渡ろうとなんかしなかった






ねえ・・・   


そんな利口なお前にだから言うのだけれど






あたしも年を取った



お前が死んで寂しいからって 次の猫を飼っても もう看取ってはやれない・・・





猫を残して死ぬなんて あんまり辛すぎる





だから お願いだよ





あと2年できっかり20年


どうかそれまでは生きてておくれ





そうしたらもう 次の猫は飼わない



お前で最後にするのだからね・・・












乱暴な抱き方に抗議するかのように んなァ~・・・ と ひどい濁声で老猫が鳴いた。



約束どおり20年を生き 

見えない目で 聞こえない耳で 23年目を生きている猫・・・










その昔 猫を飼うときは猫に対し

「 2年飼ってやるよ 」 「 5年飼ってやろう 」

そんなふうに年限を決めておかねばならないと言われていたという。



さもなくば 猫は生き続けて 古猫 となり

何かの拍子に 化け猫 に転じると信じられていたからだ。






23年生きている猫は 律義に飼い主との 契約 を守り続けているのだろうか?








見えぬはずの目を覗き込み 聞こえぬはずのその耳にソッと


「 いまどき ヒトと契約を結ぶだなんて

  あんた ずいぶんと粋だねえ 」


からかい混じりに囁きかければ





「 まあね。」 と一言


いかにも面倒くさそうに答えつつ  ニィッ・・・ と嗤ってみせる







そんな気がしてならない












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by cheshire335 | 2008-02-22 01:52 | 蟹の呟き

 手 紙





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なんだか照れくさいけど もうすぐ卒業だし

初めてあなたに 手紙 なんか書いてみようと思いました



同じクラスになったのは一年間だけだったけど

なぜだかあなたとのことは 印象に残っているんだよね



周りのほとんどの人と同じように

あなたもあたしのことを 「 変わってる 」 とか

「 でも そこが面白い 」 とか言ってたけれど

あたしに言わせるとあなたもけっこう 変な人 だったよ





そうそう


以前 あなたがあたしに言ったことで ずっと忘れられなかった言葉があります

あなたはたぶん 忘れているだろうけど・・・



原因が何だったのかはあたしも覚えていないんだけど

あたしがクラスの男子とケンカして負けて 

教室のど真ん中で泣いたことがあったでしょう?



あのとき あなた

あたしに何て言ったか覚えてますか?


他の女の子たちが 「 大丈夫?」 なんて声をかけてくる中で

あなただけ ぽつりと





「 目から 雪解け水 が流れてるよ 」





この一言を あなたがどういうつもりで言ったのか 

じつは ずうっと気になっていました



面と向かって聞くのも恥ずかしくて

今まで聞けずにいたんだけれど・・・





あのね あたし

誰からも “ 変わった子 ・ 面白い子 ” って思われてて

それはそれで良かったんだけど

“ そういう子 ” を演じなきゃって思っていた部分もあって・・・


だんだん 人前で泣いたり 弱いところとか見せられなくなっちゃって

必要以上につっぱってみたりしてね



だから

あなたが何気なく口にした “ 雪解け水 ” って言葉には どきっ とした


強がってる自分を見透かされてるような気がした


あのときの涙は ほんとに あたしの 

心の “ 雪解け水 ” だったのかもしれない・・・





ほらね?


あなたってやっぱり 変な人 だよ!

じつは あたしなんかより ずっと



そういうとこ 変わらずにいてほしいなあって思います







それじゃあ お元気で!



バイバイ
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by cheshire335 | 2006-01-29 01:52 | 蟹の呟き

林 檎 ニ 似 タ 月



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 ほとほとと、夜道を歩く自分の影がいつもより妙に長いことに気付き
 ふと振り返ると真後ろに月がありました。

 その、まぶしいくらい煌々と輝く様を見て、


 「 林 檎 ニ 似 タ 月 」


 なぜそんなふうに思ったのでしょう?
 なんだか林檎みたいに、手のひらに乗せられそうな気がしたのです。


 私は立ち止まってそっと目を閉じ、夜空に向かって両の手のひらを
 “ 何か ” を受け止めるような形でさしのべました。


 その瞬間、手のひらにかすかな重みを感じたのです。

 たとえるなら、そう、

 ちょうど “ 林檎1個ぶん ” くらいの・・・



 そっと目を開き、おそるおそる手のひらに目をやると、そこには


 「 林檎ニ似タ月 」 または

 「 月ニ似タ林檎 」 が ありました。



 私は その場に立ちつくしたまま、
 自分の手の上の 「 それ 」 について考えてみようとしましたが


 何をどうしたらいいのか?
 何をどう考えたらいいのか?


 まったくわかりませんでした。



 面倒になった私は 「 それ 」 をポケットに押し込むと
 また ほとほとと歩き始めました。


 そしてそのまま 「 それ 」 のことを、すっかり忘れてしまったのです。




 次の晩、空に月はありませんでした。

 そのまた次の晩、やっぱり空に月はありませんでした。



 私は 「 まさか・・・」 と思いつつ、
 あの夜 着ていた上着のポケットを探りました。


 「 それ 」 は そこにありました。
 真っ赤に熟した、つやつや光る 林檎 の姿をしたままで。

 
 私は 「 それ 」 を 遠慮がちにひとくち囓りました・・・







 星もかすんでしまうほどに 煌々とかがやく

 「 まるで誰かにひとくち囓られた林檎のような月 」 が

 天高くに姿を現したのは、その夜のことでした。





  【 f i n 】











 +++ あたりまえですが、このお話はフィクションです +++
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by cheshire335 | 2005-07-26 12:03 | 蟹の呟き

 くろ



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近頃は、あっという間に家が建つ。

ついこのあいだ通りかかった時は、人が住んでいるやらいないやら
それすらも怪しいような古アパートがちんまりと慎ましく建っていたのに
いつの間にか取り壊されて更地になり、小洒落た家が三軒も建ってしまった。

これじゃあ地面に草が生える暇もありゃあしない!

草ぼうぼうの空き地など、この辺りでは滅多にお目にかかれなくなってしまった。


かつてはこの町にもたくさんの空き地があった。
もちろんそこは、子どもにとって絶好の遊び場だった。
かくれんぼ、高鬼、秘密基地、財宝ごっこ・・・

よじ登れる場所には登り、潜り込めるところには潜り込み、
何が楽しかったのか、一心不乱に穴掘りをしたこともあった。


そして空き地には くろ がいた。

黒いから、くろ。
なんて単純明快だろう。

くろは、当時遊び場にしていた空き地の一つに、ある日ひょっこり現れ住み着いた猫。
ひとつ所に腰を据えない、流れ者の猫だったのだと思う。
しっかりと生きる術は心得ていて、足元にすり寄り愛想を振りまいては食べ物をねだった。

放課後、小遣いを出し合って買った安物の猫缶を持ってくろに会いに行くのが
親には内緒の楽しみとなった。


私たちが “ ライバル ” の存在に気付いたのは、それから間もなくのこと。
空き地に行ってもくろに会えなかったり、餌を与えた形跡が見られるようになった。
ある日、ばったり鉢合わせしてみたら、同じ小学校の二学年下の女の子たちだった。

どちらも互いに譲らず 「 くろは自分たちの猫だから、勝手に遊ばないで!」 と主張した。
( 今思えば、何て身勝手な言い分だろう・・・ )
そしてくろをめぐり、激しい火花を散らせることとなった。

放課後になると一目散に空き地へと急ぎ、先にくろに会えたほうが 「 勝ち 」。
負けたほうはくろと遊べないことを悔しく思いながら、スゴスゴと退散するしかなかった。


そんな、おもちゃの取り合いのような状況に疑問を抱いたのは私たちのほうだった。

くろはくろで、誰のものでもなくて、命もあれば意志もある。
そんな当たり前のことを忘れて、奪い合っては自由を拘束していた。
大好きなくろに対してひどいことをしていた・・・そのことにようやく気付いたのだ。


私たちは空き地の塀に、石でメッセージを書いて残すことにした。


くろがすきなのは みんなおなじです
くろは みんなでかわいがりましょう


次の日、同じように石で書かれた言葉が並んでいた。


わかりました
けんかはやめて なかよくしましょう





それを機に、学年の差を超えた美しい友情が始まった・・・かと思いきや、
それから間もなくくろは現れた時と同じように、とつぜん私たちの前から姿を消してしまった。

私たちと年下の女の子たちは、以前と同じように他人に戻った。



石で書かれたメッセージだけが、ずいぶんと長い間、消えることなく残っていた。
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by cheshire335 | 2005-07-18 12:11 | 蟹の呟き

shangri - la



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「 空の色が違う 」 と私は言った。
「 何それ、 詩人気取ってるんすか?」 と笑い飛ばされた。

ひと昔まえの初夏のことである。

笑い飛ばしたのは、7歳年下のアルバイト少年。
たかが7歳、されど7年。
ああ、これもジェネレーションギャップってやつかと苦笑いした。


詩人気取りでも格好つけたわけでもない。
私は見たまま、感じたままを口にしたまでのこと。
いつからか私は、毎年この季節に物足りなさを感じるようになっていた。

空の、青・・・
空の青さが足りないじゃないか?


空といえば、昔は ( 嗚呼・・・ 私もこの言葉を口にする歳になったか ) もっと青いものだった。
100人中95人が絵に描くような色をしていたはずだ。

じりじり暑くなるごとに、空の色は濃く、雲は白く威勢良く。
それを眺めて 「 ああ、夏が来た 」 と感じたものだった。

梅雨明けの雷雨に、半袖の腕を容赦なく打たれながら
むしろさばさばと清々しい気分で 「 ああ、夏が来る 」 と感じたように。

それらは夏を迎えるための、一種のセレモニーだったはずだ。


カンキョウオセン、 チキュウオンダンカ・・・
騒がれ始めたのは、ごく最近のこと。

なるほど、私より生きている時間が7年少ないアルバイト少年にとっては、
現在のこの、ブルーグレイの空が当たり前だったのだろう。

そう考えると、7年という時間を、嬉しくも切なくも感じる。

あの青空を、知ることができた7年
あの青空を、知ってしまった7年


たやすくは手が届かない、または、二度と手が届かない、という点でいうなら
“ 理想郷 ” というものは案外身近なところにあるのかもしれない・・・
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by cheshire335 | 2005-07-13 12:42 | 蟹の呟き

或る町で。



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そこは、とても感じの良い町だ。

木造の趣ある家が建ち並ぶ細い路地、穏やかに時を経た板塀、今も現役の井戸。
あちらこちらにのんびりと猫が寛ぎ、近付いても逃げる気配がない。


私が呼ばれたお宅も、大きな平屋の日本家屋だった。
古びた蔵や、ひなびた庭のある家。

私はこうした、人の暮らしの中で自然と時を重ねた住まいを愛している。
浮き出た錆や、染みついたにおいや色を愛している。
決して自分のものにならないと、わかっているから余計に愛す。

ゆっくりと家の周りを見て歩きながら、私は心躍らせている。
ポケットに忍ばせた、小さなカメラに指先を触れてみる。

仕事が終わったら、あの窓を撮ろう。 
硝子に施された細工がとてもすてき。

朽ちかけたような蔵の土壁もいい感じだ。
あとでお願いして、少しだけ中を覗かせてもらえないだろうか。


あれこれ思いを巡らせるうちに、仕事の時間となった。
わざわざ何時間も電車を乗り継いで来たというのに、
私の 「 仕事 」 はといえば、そのお宅の下足番なのだ。

巨大な玄関に、旅館のような靴箱がずらりと並べられている。
それなのに、靴箱に収まりきらない靴が溢れている。

それらを迅速に適切に片づけようとしている先から、どんどん人が出入りする。
中へ入る人々は、ぽおんと乱暴に靴を脱ぎ捨ててゆくし
外へ出て行く人は、早く自分の靴を出せと焦れている。

私は床から顔を上げる暇もなく、ただ黙々と
靴を片づけては出し片づけては出し、を繰り返しているのだ。

しかし、どうやらあまり苦にはならないらしい。
事務的に手だけを動かしながら、私の頭の中は蔵や錆や土壁や井戸や猫や
窓硝子や板塀のことでいっぱいになっているからだ。

ポケットに入れたままの、小さなカメラの重みを感じるたびに
ニンマリと笑みさえ浮かべてしまう。


果てがないかのように思えるこの作業にも、必ず 「 終わり 」 はやってくる。
時給800円、午後3時までの一日限りのアルバイト。
解放されたらあとは私の自由時間だ。
仕事前に目を付けていたものを片っ端から撮りまくるのだ!

ええと、まずは近くの路地裏へ。
一面に蔦のからんだ家があったな、そういえば神社も。
あの石段で熟睡してた三毛猫はまだいるだろうか?


機械的に、大量の靴を片づけては出し片づけては出ししながら
頭の中は撮り歩きの計画でいっぱいだ。

仕事が終わるまで、あと一時間。
ああそうだ、やっぱり先に蔵の中を見せてもらえるかどうか確認しなくちゃ!

仕事が終わるまで、あと・・・










仕事が終わるより、目が覚めるほうが早かった。
わくわくした気持ちだけが宙に浮いたまま、夢はただの夢として終わった。

あくせく働くだけ働いたのに、お楽しみはお預け!
すっかり損した気分で最悪の目覚めを迎えることとなった。



“ 良い夢なんて、見ないに限る ”・・・



つまり、そういう話である。
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by cheshire335 | 2005-07-11 15:03 | 蟹の呟き



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突然の雨に降られるのが嫌で、365日、折りたたみ傘を持ち歩いていた時期があった。
それが役に立ったことなどありもしないのに、意固地なまでに持ち歩いた。

なぜそこまで頑ななのかといえば、遡ること十数年前、たった一度だけ出先で雨に降られ
それはもう景気よく芯までずぶ濡れになった・・・ただそれだけのことが原因なのだ。

一度きりの不運を延々と引き摺る私は、神経質なまでに用心深い。
というより、相当に執念深い。


そんな私もいつ頃からか、
「 これは明らかに降らないだろう 」 と思える日には傘を置いて出かけられるようになったものの
ずぶ濡れになって途方に暮れる自分を想像しては、一日中そわそわと落ち着けずにいる有り様。

こんな些細なことに囚われているとは・・・
少々、いや、かなり情けないぞ!と我がことながら思う。


ある雨の日。
ふと窓の外を眺めたら、結構な降りの中、ひらひらと紋白蝶が飛んでいた。
打ち付ける雨をものともせず、あの繊細な羽根でぐんぐんと力強く飛んでゆく。

なんだかちょっと、感動した。

そして “ じぶん ” の小ささに、なんだかちょっと凹んだ・・・
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by cheshire335 | 2005-07-09 13:10 | 蟹の呟き

紫陽花



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花、というものに、実のところあまり興味がない。
切り花はすぐにしおれてしまうからつまらないし、植木はすぐに “ 枯らして ” しまう・・・
花に関わることを 「 才能 」 とするならば、私にはそれが皆無であるらしい。

だけど、桜と紫陽花は別だ。
こんなに心惹かれるものはない。
どうしようもなく 花音痴 な私にさえも、季節を感じさせてくれる。

いつ咲くか、まだ咲かぬかと、散々ヤキモキさせられたかと思うと、
一気に咲いて一気に散る・・・それを 桜の醍醐味 とするならば、
紫陽花の醍醐味は “ 経過 ” を楽しめることだろう。

一雨ごとにうっすらと色づく様に、うっとりわくわくどきどきする。
そういえば紫陽花の花言葉は 「 移り気 」 だったか・・・
そしてまた、私の誕生花でもある。
皮肉にも (?)


季節を知らせる花でありながら、なぜか紫陽花は息が長い。
秋やら冬やらに咲いているのを見かけて ぎょっ!? とすることもしばしば。

実際、わたしの記憶の中にある 紫陽花の思い出 も時期はずれなものだ。
あれは、夏のおわり。


子どもの頃、友達の家で遊んだ帰り、彼女のお母さんが庭の紫陽花を一枝切ってくれた。
「 土に挿しておいたら根付くかも 」
そう言われて持ち帰ったものの、我が家はマンション住まい。
それでも一縷の望みを託し、いちばん大きな植木鉢に枝を挿した。

数日後、植木鉢の置いてあるベランダに、一匹の蝉が墜ちてきた。
夏のおわり、地上に墜ちた蝉の多くは二度と飛び立つことがない。
我が家のベランダに墜ちた蝉も例外ではなく、仰向けになったまま時折もがくばかり。
それを見て、子ども心に 「 ああ、これはもうダメだ・・・」 と感じた私は、
とにかく “ 木 ” に留まらせてやろう! と思ったのだ、なぜか。

そのとき “ 木 ” の役割をしてくれたのが、土に挿したばかりの紫陽花だったのだ。
ぐったりと横たわる(?)蝉を拾い上げ ( そういえばあの頃は虫に触れたのだなあ・・・ )
まあ、地面に転がってるよりはマシでしょうよ? などと語りかけながら、
紫陽花の枝に体を近付けると・・・しがみついたのだ、しっかりと。
そしてそのままじっとしていた、三日間くらい。

ある朝、蝉は紫陽花の根元に ぽとっ と落ちていた。
私はそのまま、紫陽花の根元に蝉を埋めた。


某小説では、桜の根元に死体が埋まっているらしいが、
私のイメージでは桜より紫陽花、そして死体は蝉の亡骸なのである。
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by cheshire335 | 2005-07-07 11:28 | 蟹の呟き